レーザ焼肉(3)SMAP ノーベル賞を逃す!

ノーベル賞

あともう少しだった、ノーベル賞まで。我々 SMAP が独自に押し進めてきた研究に関して、1997年にノーベル生理学医学賞を受賞した人物がいる。その名もS.B.プルジナー。痴呆症から始まり最後には脳がスカスカになって死んでいくという恐牛病やクロイツフェルトヤコブ病の原因であるプリオン発見者のその人だ。我々は以前にプリオンの重要性を指摘し(レーザ焼き肉2を参照)、レーザを用いた独自のプリオン対策研究を行って来た。我々のレーザを用いたアプローチは医学界においてはオリジナリティが非常に高く、ある筋においては脚光を浴びていた。その矢先、ノーベル賞の知らせを耳にした時は我々 SMAP も動揺を隠しきれなかった。もう一歩だった。ノーベル賞まで。しかしプルジナーも言っているようにプリオン研究はまだ始まったばかりである。これからが勝負である。

とその矢先、今度はノーベル物理学賞の知らせが入ってきた。何とレーザを用いた原子冷却のパイオニアがノーベル賞を獲得したのだ(1997年)。これには我々もさらに驚いた。原子冷却といえば我々のOBが開発当初から着目し、暖めてきたテーマではないか。またしても先を越された悔しさが我々の胸をよぎったが、戦う研究をモットーにする SMAP には過去を振り返る余裕も時間もない。SMAP の胸にあるのは明日の成果と、うまい焼き肉だけである。

ここでSMAPとは何者か。Super Meat by Advanced Photons 略してSMAP。レーザを使った焼き肉に命をかける非営利独立研究団体。恒例の焼き肉大会でその実力が発揮される。モットーの「うまい焼き肉をレーザで」を忘れる事なく、日々レーザ焼き肉の開発に精進している。Road to Yakiniku 。最近はより学術的になり、プリオンに対する研究も盛んである。もともとイギリスでの恐牛病騒ぎから始まり、「安全な肉をレーザで」を目標に研究を行っている。

ノーベル賞の話に戻ろう。プルジナーの発見したプリオンとは核酸を持たない病原体であり、じつはただのタンパク質である。何故DNAやRNAのない物質が感染能力を持っているのか、というのが長年の謎であった。またウイルスでも細菌でもないただのタンパク質がどうして恐ろしい病気を引き起こすのか、これも未だに分かっていない。ここで重要なのは、核酸が存在しないためにこれまで SMAP が行ってきた紫外レーザによる殺菌が通用しないのである。つまりプリオンを殺菌するなどという事は不可能なのである。

これまでに分かっている事は、プリオンには2種類あり、タンパク質の2次構造の違いにより正常プリオン(αヘリックス型)とスクレイピープリオン(βシート型)に区別される。正常プリオンは健康な人も多く持っており、全く害がない。しかしながら、遺伝子の変異により正常型からスクレイピープリオンが生じると数年の潜伏期間の後に症状が現れ、痴呆、失調を経て死に至る。そのため、体内に多く存在する正常プリオンからスクレイピープリオンを識別、抽出することが重要になってくる。

そこで我々 SMAP の出番である。この2つのプリオンの違いはただ一つ、2次構造である。つまりらせん構造か平面状(シート状)かという違いである。この検出にレーザを使わない手はない。SMAP では光の旋光性に着目する。

タンパク質分子全体としての旋光性は通常アミノ酸の個々の旋光度の合計よりも右旋性である。これはらせん構造に起因する。従ってほどけた構造になると左旋性が増大する。この現象を利用することでタンパク質中のらせん構造の含量を推定できる。つまりレーザ光をプローブとして旋光性を測定し、2種類のプリオンの比を求める事が可能となる。この割合はスクレイピープリオンの危険度の指標となり、プリオン病の早期発見に役立つと予想される。

SMAP の野望は今始まったばかりである。今度こそはノーベル賞を。しかし実は、我々の真の目標はうまくて安全な焼き肉作りに尽きるのである。我々の活動に賛同できる同士を求む。