内田研究室の研究テーマ
(2)共通信号入力同期を用いた情報理論的セキュリティ

1.相関乱数秘密鍵配送

近年の情報化社会において、情報セキュリティは非常に重要な技術となっています。現在利用されている主な暗号方式は、計算量的複雑性を安全性の根拠とした計算量的セキュリティです。内田研究室では、計算量的セキュリティに代わる新たなセキュリティ方式として、情報理論的セキュリティ[1]の実装方法に関する研究を行っています。その一つの手法として、半導体レーザの共通信号入力同期を利用した相関乱数秘密鍵配送[2,3]を研究しています。共通信号入力同期とは、駆動用レーザからの信号を二つの同期用レーザに入力すると、同期用レーザにおいて不規則な出力波形が同期する現象です。この現象を利用することで、二人の正当ユーザ間で相関のある乱数を共有し、秘密鍵を生成することができます。これは相関乱数秘密鍵配送と呼ばれています。

図1 相関乱数秘密鍵生成方式の概念図 図1 相関乱数秘密鍵生成方式の概念図

2.現在の研究内容

本研究室では、120km離れたユーザ間において相関乱数秘密鍵配送の実証実験に初めて成功しました[2]。さらに、半導体レーザを多段化することでセキュリティの向上とその評価を行いました[3]。また相関乱数秘密鍵配送への応用上、共通信号入力同期において駆動信号が記録されないことが重要となります。これは、盗聴者が駆動信号を記録して利用可能な場合には、正当ユーザの出力波形を推定できてしまうためです。そのため、駆動信号としてTHzを超える広帯域な光ノイズ源であるスーパールミネッセントダイオードを用いた共通信号入力同期の研究を行っています。

また、同期用レーザの装置を小型化することで空気や温度のゆらぎの影響を小さくし、同期を安定化させることが可能となります。そこで、小型な光集積回路を同期用レーザとして用いた共通信号入力同期の研究を行っています。

参考文献
[1] J. Muramatsu, et al., Lect. Not. Comp. Sci., Vol. 5973, pp. 128 (2010).
[2] K. Yoshimura, et al., Physical Review Letters, Vol. 108, pp. 070602 (2012).
[3] H. Koizumi, et al., Optics Express, Vol. 21, pp. 17869 (2013).