内田研究室の研究テーマ
(1)半導体レーザカオスを用いた高速物理乱数生成
~世界一速いサイコロ~

1.乱数の応用

半導体レーザで発生するカオスの応用として、内田研究室では世界最速の物理乱数生成を行っています。乱数は擬似乱数と物理乱数に大別されます。擬似乱数はアルゴリズムにより生成され、高速で生成可能ですが周期性や再現性を有しています。一方で、物理乱数は物理現象に基づくため周期性や再現性がありませんが、生成速度が遅いという欠点があります。また、乱数は暗号通信や大規模な数値シミュレーションに用いられており、それらの応用には高速な乱数が必要とされています。そこでレーザの高速性とカオスの複雑性に注目し、レーザカオスを用いた高速物理乱数生成を本研究室では提案しています。

2.半導体レーザカオスを用いた物理乱数生成方式

半導体レーザカオスを用いた物理乱数生成方式を図1に示します。半導体レーザの出力光を鏡で反射させ、戻り光として元のレーザに注入することでカオス出力光を発生させます。そのレーザカオス光を電気信号に変換し、オシロスコープで波形を取得します。取得したレーザカオス波形と設定したしきい値の大小関係を比較することで、0または1の乱数列を生成します(図2)。

高速物理乱数生成

図1 半導体レーザカオスを用いた高速物理乱数生成

生成された乱数

図2 生成された乱数
(1を白に、0を黒に変換)

この方式により、1秒間に17億個(1.7 Gb/s)の2値乱数の生成速度を達成しています[1]。またカオスの周波数帯域拡大やマルチビット乱数生成方式などの手段を用いることで、1秒間に1.2兆個(1.2 Tb/s)の生成速度を達成しています[2]。

さらに内田研究室ではカオスの周波数帯域拡大だけでなく、光へテロダインを用いた乱数生成方式や、物理乱数生成器の小型化[3]に関する研究を行っています。

参考文献
[1] A. Uchida, et al., Nature Photonics, vol.2, pp.728 (2008).
[2] R. Sakuraba, et al., Optics Express, Vol. 23, pp. 1470 (2015).
[3] R. Takahashi, et al., Optics Express, Vol. 22, pp. 11727 (2014).