一般的な研究紹介
(1)レーザとカオスの基礎

レーザって何?

スターウォーズのような近未来映画やディズニーランドのショーなどで、レーザ光線をご覧になったことがあるでしょうか?レーザは真っ直ぐ進む光というイメージですが、太陽や蛍光灯などの普通の光とどこが違うのでしょうか?実はレーザとは人類が手にした新しい 「きれいな光」 なのです。それではどのようにきれいなのでしょうか?レーザは実は非常にたくさんの光の粒(光子)から成り立っており、その波長や位相が全てそろっているのです。難しく言うと「コヒーレントな光」と呼んでいます。このコヒーレントな光こそ社会の役に立つ鍵なのです!!!

図1 レーザ 図1 レーザ

レーザで何ができるの?

現在の情報通信社会の基盤を支える技術がレーザです。皆さんが使っているインターネットの基幹通信路には光ファイバとレーザを用いて情報が送信されています。レーザ光を用いた通信方式は10ギガビット(一秒間に100億ビット)以上の情報量を送信することが可能となります。動画や音楽なども世界中瞬時に伝送できるのが光通信なのです!身近なところでは、CDやDVD、BDなどの光ディスクの読み取り装置にレーザが組み込まれています。またレーザは医療応用にも用いられています。レーザメスやレーザを用いた視力回復手術は既に実用化しており、多くの人々がレーザの恩恵を受けています。その他にも、レーザ加工、レーザマーキング、レーザ計測などなど、私たちの生活の基盤技術としてレーザは用いられているのです。

カオスって何?

落ち葉の落ちる様子や、煙の立ちのぼる様子は 非常にランダムに見えます。しかし一見ランダムに見えても、その中に規則性(ルール)が隠されている場合があるのです。そのような現象をカオスと呼んでいます。難しく言うと、「決定論なルールにより発生する不規則振動」のことをカオスと呼びます。

カオスは自然界の至るところで観測されます。例えば電気回路やレーザ、化学反応に生物現象、脳のダイナミクス、天気変動などのランダムな現象の原因となっています。カオスの持つ重要な性質として初期値鋭敏性がありますが、これは初めの状態のわずかな違いが将来に大きく影響するという性質です。

図2 カオス 図2 カオス

カオスで何ができるの?

カオスはランダムな現象なので、工学的には使いにくいと思われてきましたが、近年多くの応用が提案されています。家電分野では、自然に近い風を作るカオス扇風機や、カオス洗濯機、またカオス食器洗い機なども実用化されています。人工生命にカオス理論を用いた例としては、ネズミの動きをカオスで実現したカオスねこじゃらし「タマのおともだち」も市販されています。さらにカオスのダイナミクスを脳の神経回路に適用し、従来のコンピュータよりもより人間に近い「脳型コンピュータ」の研究も日本を中心に精力的に行われています。加えて、カオスの複雑性を利用した秘密通信への応用も研究されています。

レーザ+カオス=???

本研究室では、レーザとカオスを組み合わせた研究を行っています。レーザはきれいな光、カオスはランダムな現象、それらを合わせると一体何ができるのでしょう?

本研究室では、世の中に存在しない新たな研究テーマに果敢にチャレンジしています。その最も良い例が、「高速物理乱数生成」です。ランダムな数字の列である乱数は、情報セキュリティ分野や大規模数値シミュレーション分野で不可欠な要素技術です。本研究室では、レーザの高速性とカオスの不規則性を組み合わせることで、従来よりも遥かに高速となる毎秒1ギガビット(毎秒10億個)を超える生成速度で乱数を生成することに、世界に先駆けて成功しました。さらなる研究の進展により、現在では毎秒1テラビット(毎秒1兆個)を超える生成速度を実現しております。

また新しい情報セキュリティ方式として、「情報理論的に安全な秘密鍵配送方式」を提案しております。本方式を用いることで、安全な情報セキュリティ機能を搭載した通信システムの開発を日夜行っています。情報通信分野においてセキュリティ問題は今後ますます重要となりつつありますが、画期的な技術開発を目指し、夢を持って研究を進めています。